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読書感想「復員船が来た」

GWに読んだ本、「復員船が来た」をご紹介します。

復員船とはなにか。太平洋戦争が終了後、南方や旧満州などから兵隊さんが引き上げてくることを「復員」と呼びます。そして、その引き揚げの際に利用する船が復員船です。

著者の鈴木正七氏は、昭和十四年に陸軍に入隊、昭和二十一年に復員するまで、七年の長きに亘って戦地を転戦された方です。読み始めてすぐに気がついたのは、抑制されて読みやすい文体、感情的や、懐古主義に走らず、淡々と事実を書き進められる筆致に却って、戦場を体験した者でしか書きえない鋭さが内在されていること、です。

この点が、類書と本書の決定的な違いとでも言えるのではないでしょうか。こうした従軍戦記ものは、大岡昇平の名作に代表されるように、インテリ層が内心の反戦感情を抑えつつ、非合理な兵隊生活を耐えていく、というパターンが多く目につきます。でも、鈴木の視点は、本当に普通の市民が入隊するとどう感じるか、という点を淡々と述べているので、却って新鮮です。

著者は、南方戦線で、負傷兵として生き残った訳ですが、復員できた兵士の割合は二割弱にすぎないと言います。トカゲや蛇まで食う生活。そして、著者の発言でもっとも印象が残った言葉が、人間は食うに困ったときに本当の本性が現れる。平常は紳士然としていても、そういう究極の状況に陥ると、たいてい豹変する、というメッセージです。

そういう究極の状態は体験したくないですけど、きっとそうなんだろう、と思います。現に、会社は究極の状態ではありませんが、プロジェクトが座礁しかかったときの関係者の態度にはその一端が窺えると思います。

近所の本屋でふと手に取った本ですが、GWの思わぬ収穫となりました。

5/7日記

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コメント

ありがとうございます。私の祖父が書いた本です。祖父は一昨年他界してしまいましたが、祖父の本を読んで、感想をいただいて、とても胸があつくなりました。ありがとうございました。

投稿: まゆ | 2009.10.07 15:07

逆境の時でもつきあってくれる友達が真の友達、といいます。本当にそうだと思います。

Primera

投稿: Primera | 2005.05.22 18:50

> 人間は食うに困ったときに本当の本性が現れる。

そこまでの経験はないし、したくもないです。
でも、そこまでにいかなくても「困った」状況は、その人がどういう人なのかを判断するのにはよいようです。
だれでも、順調なときはご機嫌さんやし、気前もよくなるというものですね。

投稿: 働く美少女☆ | 2005.05.21 15:01

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